不幸にして歯を失われた場合の治療方法について
今回は重度の歯周病・虫歯や、ケガなどによる歯の破折など様々な要因によって不幸にして歯を失われた場合、どのような治療方法があり、またどのようなメリット・デメリットがあるのかについてお話させて頂きます。よく「さし歯」と混同される場合が多いのですが、「さし歯」」はあくまでご自身の歯(根の部分)が残っている場合に適用される治療法ですので、紛らわしいですが、根から完全に歯を喪失された場合のお話となります。
保険適用されている方法には①可撤性義歯(入れ歯)、②固定性義歯(冠架橋義歯、ブリッジともいいます)があります。①の入れ歯は歯のない部分に床(歯ぐきの部分)と人工の歯がついた本体部分にバネを繋げて残っている他の歯に引っかけて取り外して使用するものです。歯のない部分が少なく、小さな入れ歯であれば比較的簡単に作製できます。両となりの歯や他の歯を殆ど傷つけませんが適合が不良であると下の歯ぐきが痛んだり、バネのかかる歯が汚れやすくなったり、また違和感が他の治療法より大きいのが欠点です。一方②の固定性義歯(いわゆるブリッジ)は主に歯のない部分の両となりの歯を削って、型取りしたのち被せものを繋げた形で作製し、セメントで固定します。取り外しの入れ歯より装着した違和感が少なく、支台となる歯で咀嚼するため噛み心地もよいといわれます。欠点は健康な歯を削ることと、一度固定されるとやや清掃しにくくなること、一本一本別々に生えている歯を固定してとめてしまうことで歯の自然な動きを抑制すること、冠の内部が虫歯になることがあること、また最近の統計では大体予後は9~10年でだめになるとされていることなどです。保険適用外で受けられる場合①の入れ歯ですと薄くて丈夫な金属の入れ歯や金属のバネを使用しない審美的な入れ歯など、また②のブリッジであれば白い被せもので作製できるなどといった使用材料、耐久性、審美性を向上させたものもあります。
①、②以外のものが③インプラント治療ということになりますが、最近では過去に比べ非常に一般的に周知されるようになってきました。当院でも多くの方がこの治療を受けておられます。インプラントはブリッジのように他の歯を一切削ることもなく、また入れ歯のように取り外しもないため、天然の歯に非常に近く、違和感もなく、咀嚼する能力も非常に高いこと、予後も長期的に良好なデータが示されていること、また、一か所歯が喪失した部分にインプラントを取り入れることにより、他の歯の寿命にも貢献できること、治療がシンプルになること等々・・・非常に多くの有効なメリットがある治療法であります。デメリットとしては保険適用されていないため、ある程度治療費用が高くなること、また全身的なご病気をお持ちの方は手術が出来ない場合があること、骨の喪失が著しい場合、多少大がかりな手術になったり、治療期間が長くなることなどが挙げられます。われわれにとって最も大切なことは「健康な歯を生涯にわたり一本でも多く残していくこと」です。ですが不幸にして万一歯を喪失してしまった場合、決して安易に考えずにじっくりと検討して頂きご自身にとって本当に最良だと思える治療方法を選択なさって下さい。